『会議』から見るスポーツビジネス

川淵三郎キャプテンインタビュー

はじめに



今までに2000回以上のインタビューを受けてきた、と語る川淵三郎キャプテン ( 以下キャプテン ) 。J リーグ創設に代表される日本サッカー界の発展によって、日本人の心に「スポーツ文化」「スポーツビジネス」の芽を植え付けた、最大の立役者であることは間違いないだろう。



キャプテンは一方で「独裁者」と呼ばれることもしばしばだ。歯に衣着せぬ物言いがその呼び水となっているのだろう。だがしかし、単に「独裁者」という批判に帰結させてしまうことについては、何かキャプテンについて、重大な見落としをしてしまっているのではないか。そう感じていた。見落としとはキャプテンの、実際に働く姿である。私たちはメディアを通した断片的なキャプテンしか知らないのだ。



そこで今回の私たちは、我々が日常で頻繁に行っている『会議』にスポットを当ててインタビューを展開した。私たち大学生にも『会議』を通じて物事を作り上げていくという機会は多いが、自分を含む数多くの意見を引き出しながら、それを一つの方向にまとめていく作業にはとても困難を感じている。J リーグ創設を始め数々の大事業を成し遂げているキャプテンの『会議』にまつわるエピソードを掘り下げていくことで、今を生きる私たちに求められている「問題解決能力」や「実行力」、そしてスポーツを支える者としての「気概」を明らかにすることができると考えた。

























会議と評議



熊本 ( 以下、熊 ) :本日は『会議』について、3つの側面からお話頂こうかと思っております。1つは自分の意見を表明する力。1つは他人との意見を調整する力。そして私たちスポーツビジネスを学ぶ身から、会議で実際に話されていたスポーツビジネスそのものについて、の3点です。まずは自分の意見を表明する力について。キャプテンは非常にリーダーシップがあり、決断力、実行力をお持ちの方ですが、意見を表明する際に心がけている点はありますか。



川淵三郎キャプテン ( 以下、川 ) :一番始めに結論を言う、ということだね。その結論に対して後から説明をするように心がけている。これは普通の会社でも全く同じことなんだけど、5分で済む話を30分も長々と話す人がいるんだよね。これは25分間をまるで無駄な話に費やしている。上司は物わかりが良いから、何を言わんとしているかは、割合すぐに理解ができるんだよ。それは何故と聞かれてから理由を説明すればいいのであって、僕は結論を始めに言って、後から説明するという手順を踏むことが多いね。



熊:そのお考えはどのように培ったものでしょうか。



川:僕は小学5年生から中学生ぐらいまで演劇活動をしていて、吉岡たすく先生という恩師に指導されていたのね。そこで発表における表現の仕方というものを、自然と身に付けていったことが大きいかなと思う。あとはやはり、会社(古河電気工業)の中でのサラリーマン教育かな。僕らの時代はTQC(トータル・クオリティ・コントロール、総合的品質管理)って言葉があって、その教育をものすごく受けたんだ。ここでものの定量的な把握が人に説得力をもたらすということを学んできたことが、今の発言の段取りに繋がっている。



熊:スポーツでの会議と一般社会・企業で行われている会議に違いはありますか。



川:会議っていう言葉の定義は知ってるかい。僕は今日のインタビューのテーマは会議だっていうんで、辞書を引いてきたんだよ。



熊:複数人が集まって物事を決定すること、ですね。



川:物事を決定する場合と、それから「評議」っていうんだけど、意見を説明し合ったり、言い合う。「評議」っていうのは結論を出す訳じゃないんだよね。この両方の面があるんだ。



南アフリカW杯でチームがバラバラになっちゃって、直前のコートジボワール戦で敗北したとき、あの後に川口が選手たちを招集して、集まって色々話し合ったわけだよね。この話し合いには結論がないよね。しっかり頑張ろうという決意の表明をその話し合いでやらせようと思って川口は皆を集めたんだ。そうしたら、あまり世の中には広まってないけれど、もう不満ばかり出たらしいんだよね。戦術への不満、監督への不満、選手起用に対する不満。それが1時間ぐらい不満だらけの意見を聞いて、皆同じように思ってるんだ、というある種の共感をそこで得たんだ。そしてそのバラバラだったチームに、最後に闘莉王が「我々は下手なんだから、泥臭くやるより仕方ないんじゃないか」と。これがこの会議の結論だよね。この結論を出そうと思って話し合いを始めたわけではないのだろうけれど、ここで選手たちが一つの方向を向いたんだ。そのあくる日の練習から、普段は皆お互いに要求しなかったのが、具体的に話すようになった。そこからチームはものすごく変わったんだよ。



こういうのは会議と言ってもいいけれど、会社での何らかの一つの決定をする会議とはまるで違う会議だよね。お互いに理解し合うっていう会議も、こういう例からすると意味はあるなと思った。僕は、結論を出さない会議なんてのはまるで意味がないとずっと考えていたのだけれど、何かが決まらなくても、相手の気持ちが分かることの意味、価値が見出せる会議もあるということだね。





枝葉と幹



熊:キャプテンは会議において議長のようなリーダーを務めることが多いと思いますが、そのポジショニングは調整役が多いのでしょうか、それとも自分で意見を出してそれを推進していく役でしょうか。

川:両方を使い分けているね。ただリーダーとしては、皆の意見を聞いていってもいい場合というのは、大きな問題ではない時だよ。これは「枝葉」の場合だね。一方、「幹」の場合がある。こっちでなければならない、ということに対して、皆の意見を聞きながら違う方にチェンジするなんてことは絶対にしない。



例えば、僕らがJリーグを作る時には、ドイツのスポーツシューレっていう地域に根ざしたスポーツクラブのイメージをずっと持っていたわけだよね。これを目標にして進んできたから、皆の多数決で違うほうに行くと出ても、絶対に行かせないよ。幹の問題っていうのは、もう「これしかない」ってものなんだよ。だからこの本筋から外れた議論が出ても、それは自分の理論武装で、説得力を持ってリーダーとして方向付けをしてきた。そういう自信と確信と信念と、強い意志がある。



でも、この目標に至る過程では、色んな方法があるわけだよね。その範囲ならば、皆の意見を聞いて決まった方向へ進んでも何もおかしくない。「枝葉」と「幹」は自分の中で分け隔てしていたよ。ここは断固譲れないという「幹」の問題に関しては、皆が反対していようが『会議』において皆を説得できる自信があるんだよね。

Jリーグは10チームでスタートして、次は12チームにするとはじめに言ったんだけど、その12チームになる際に当時の日立 ( 現柏レイソル ) がどうしても入れてほしい、12チームを13チームにしてほしいという申し出があったんだよね。それについては20万人くらいの署名を集めてきたり、大変な柏市の盛り上がりがあって、どうしようかという会議になった。



理事一人一人に意見を聞いていったら賛否はちょうど半々くらいだった。僕はその時に「我々は『走りながら考えるJリーグ』といって、走りながら考えてルールも変えていけばいいんだと言ったけど、初めに10から12と決めたのにそれを13にするのはどう考えてもおかしいでしょう。本当にそれだけ強いチームなら、来年も2つ増加させると言っているのだから」ということを話してから「じゃあ皆さん、これを多数決で決めるのですか。多数決でいいのですか」と言ったら、1人の有力な理事が「いや、多数決は良くない。キャプテンが最後に決めてもらえばいいんだ」となって、僕は参加は認めないということで12チームに落ち着いた。



この理事がそんな発言をするなんてことは予測していなかったよ。こういう時に僕は根回しを一切しないから。けれども、会議が収束する、その「方向付け」を僕はきちんとできる。物事を決めるときに最後に多数決で決めた、なんてことは J リーグでは記憶にないね。

また違う例だと、ネクスト10という委員会。 J リーグには最終決定をする理事会、各クラブの社長が集まる実行委員会、その下に J リーグ事務局が主催する色々な委員会があって、次の10年の J リーグをどういう風に持っていくかを話すネクスト10という委員会もそこにある。委員会で討議をして実行委員会に上げて、理事会に上げて決まる。これが決定の過程だよね。



そして1997年頃に、1試合平均の観客動員数がチーム数に反比例してどんどん落ちていったのね。この時、チーム数が多く、選手の層が薄まって魅力ある試合ができない、だからチーム数を減らすべきだという議論が起きて、ネクスト10の委員会からチーム数を減らせという答申が上がってきたんだよね。これは断固許さない。これはJリーグの理念に反することなんだ。日本全国にJリーグのクラブを作っていこう、僕らは100作ろうと言っているのに、10くらいのチームだけがそこそこ利益を上げて日本の中で発展していって、どういう意味があるんだ、とものすごく怒ったよ。



ただ委員会から上がってきたものを実行委員会で討議しないわけにはいかないんだよね。これが理事会にも上がってきたら、僕は最後は体を張って止めるつもりでいたんだ。けれど、これは実行委員会で否決された。やっぱりドイツのスポーツクラブという、あるべき姿をいつも持っているから、それは良くないと思うことに対して、自分たちの説得力でそれを阻止できる強い自信を持ちながらやってたんだけど、周りはすごくそれを理解してくれていた。



熊:最近は「Jプレミアリーグ」構想が本格化というニュースがありましたが。

川:もうね、僕が生きてる、目の黒いうちはそんなこと断固許せない。これこそ「幹」の問題なんだよ。こんなの許して J リーグをやっていられるか、という話だよ。

熊:言い換えますと、キャプテンの意見をどうしても通したい「幹」の会議では、会議の前に勝負が決まっているということですか。

川:そう、「幹」の場合はだけどね。重要な会議であればあるほど、定量的な把握や、誰も反論できないくらいの理論武装をして臨むことが大事なんだ。



J リーグ発足の時に、ユニフォームのデザインを考えていたら、サッカーに縁のなかったミズノから全チームの面倒を見たいという申し出があって、その額が2億円だったんだ。当時の2億円といったら大変だよ。日本サッカー協会がもらっていた協賛金が年間1500万円だったのに、2億円を10チームで割って2000万円。この時には今まで日本サッカーと縁の深かったアディダス、プーマ、アシックスから猛反発があった。でも、この3社を足してもミズノの半分くらいの額だったのね。ミズノに決めるときには、もうひどい誹謗中傷に遭ったよ。「川淵は裏でなにか貰ってるに違いない」とか。しがらみを断ち切るってのはとても大変なことなんだよね。

このしがらみを断ち切る理由付けとしては、トータルの金額を用いた。それぞれのクラブにそれぞれのメーカーと契約させたトータルの金額と、Jリーグの一括で決めた2億円とを細かく分析して納得してもらったんだ。Jリーグの立ち上げの時には万事こういう感じで、相当恨まれましたよ。しかし僕は、Jリーグのためにはこのほうがいいんだと確信を持ってやっていた。こういう決断は僕しかできなかっただろうと思うね。

熊:「独裁者」と呼ばれることに関して、会議で自分の意見を通すにはそういう側面が生まれるのは仕方ないと感じるのですが、「独裁者」と呼ばれることに関してはどう思いますか。



川:初めは新聞の一面に大きく出てえらい言われようだと思ったけれども、時が経つにつれそれは「独裁者」でいいんじゃないのって、悪い気はしなくなったなあ。というのも、多数決で決める話ではなかったから。ドイツのスポーツクラブを自分の目できちんと見て、具体的な目標設定ができていたことが大きかったね。僕はどう進むべきなのか、どうするのが皆のために幸せなのかっていう視点でものを見ていたから、怖いものもなかったよ。



























アジアの会議、世界の会議

熊:特に日本では自分の意見を通そうとするのは好かれる傾向にないと思うのですが、アジアや世界の会議ではどうなのでしょう。まず、アジア人が集まっている会議は、日本人のみが集まっている会議と比べてどのような違いがありますか。

川:ものすごく違うね。アジアでの会議は、必ず相手に対する褒め言葉から始まるとか、委員長の名前をずっと読み上げるとか、要らない部分が多いんだよね。日本人にとっては面倒だなって感じると思うよ。

熊:僕は逆かと思っていました。日本では2時間たっても結論が出ないのに比べて、世界にいくほど会議はすぐに結論に辿り着くものであるとイメージしていたのですが。

川:僕から言わせれば、サッカー界のAFC(アジアサッカー連盟)やFIFAの会議と比べれば、JFA(日本サッカー協会)の会議のほうが絶対に短時間で結論を出していくということをやれていると思うね。僕の場合はありとあらゆる会議に、2時間以上は絶対にやらないと要望を出している。AFCやFIFAの理事には、とりあえず何か言わないと駄目と思うのか、とりあえず意味もないけれど手を挙げて意見を言うなんて人が多いんだよ。

藤野:そうした世界での効率的でない会議の中で、意思決定のプロセスはどうなっているのでしょうか。

川:これはACL( アジア・チャンピオンズリーグ ) の改革で言うと、大体僕とAFCのハマム会長との間で事前に問題点をすり合わせておいて、最後は会長の全くの同意を得ているということで話を進めるんだ。ACL改革では皆が僕のことをリスペクトしてくれているから意見が大方は通っていたけれど、ただ各国協会の会長がかなり抵抗を示す場合があるんだよね。例えば中近東では、王様の賛同がないと進まないことがある。リーグ統括機構の法人化をしないとACLの参加資格無しと主張した時に、中近東の会長が集まって反対する動きがあったのね。これってJリーグのスタートとすごく似てるんだ。こんなのできないと皆が反対する。ここで遠慮することはない。宗教も国民性も政治形態も違う中で一つの基準も決まらないんじゃ話にならないって僕の意見に、ハマム会長が全く同意したことでうまく話が進んだね。これは根回し、つまり1番トップの人との話し合いをきちんとしないことにはうまく行かなかったと思うよ。

熊:さらに細かく言いますと、中東の王様がいるような国と、韓国や中国のような東アジアの国ではまた国民性も大きく違うと思いますが、それは会議にも表れますか。

川:それは出るね。中国の会長は共産党の幹部なんだよね。だから言ってみれば副会長が会長の役目をしているのだけれど、最後には共産党幹部との話し合いがあったりするから、非常に難しいよね。

熊:中国は政治・経済では非常に存在感があります。なぜサッカーに関してはこれほど存在感がないのでしょう。

川:八百長問題が大きいね。1993年にJリーグがスタートして、中国が日本に刺激を受けて僕の所に勉強に来て、そして1994年にCリーグをスタートさせた。それはもう爆発的な人気で日本の会社もスポンサーになったりしてたのだけれど、その後に八百長問題が起きて、一気に人気をなくしちゃったんだ。その後始末がついていないんだね。



ただ、中国は必ず伸びてくる。というのは、胡錦濤、近習平(次期国家主席候補)もサッカーが大好きで、中国がアジアの中で強くないことをすごく嘆いているんだよね。今回のW杯(2010年) にも出場できなかったので、もっと子供たちの育成をしっかりしないとということで、少年サッカースクールを何百、何千と作ったという話だね。Cリーグができた時に、卓球のスクールと同じように、サッカーのスクールも沢山あったようだけれど、子供がスターになれないということで、サッカーに行く子供たちがものすごく減ったらしいんだ。ところが一回勝てば沸くサッカーで強くなることが、国民の士気を上げるということで、なおさらサッカーを、とトップが主張している。だから、10年後くらいには、アジアの中での相当なサッカー強国になるということは間違いないと僕は思う。



熊:今までのお話からも分かるように、グローバル化はどんどん進んでいると言われています。スポーツ界で活躍したい若者は数多いと思うのですが、その若者たちが今の時期に身に付けておくべきこと、学ぶべきことはありますか。



川:やはり、日本のことをしっかり勉強すること。海外に出て、自分の国はこういう文化と歴史を持っていて、という国の成り立ちをきちんと喋れなければならない。それから、僕が一番後悔しているのは、英語を勉強しておけばよかったということだね。あとは、本を読むこと。人間は全てを体験できるわけではないから、本を読むことによって、自分が経験したかのような知識や見識を身に付けるんだ。だから今の若い人たちには、英語をしっかり勉強してほしいと思うのと同じくらい、本を読んでほしい。どう本を読むかといったら、もう濫読でいいんだよ。濫読しているうちに、面白いと思うものが出てくるだろうし。



熊:キャプテンのお勧めの本はありますか。



川:スポーツでいうと、早稲田の元ラグビー部監督の大西鐵之祐さんの書いた『闘争の倫理』はとても勉強になった。これはスポーツを学として進める人、スポーツとは何たるかを理解するためには、ぜひ読んだほうがいいと思うよ。



熊:SOJという団体が必ずインタビューの最後にしている質問があります。これはキャプテンにぜひお聞きしたかったことでもあります。キャプテンにとって「スポーツ文化」とは何でしょうか。



川:「スポーツ文化」は人間にとって絶対に必要なもの。しかも、それは先進国の中で日本に一番ないもの。スポーツ文化が日本でもっと広がることによって、人生がもっと豊かになる。そういう信念で今までやってきているよ。日本人は損をしている。先進国の中でスポーツの持つ意義を一番知らない国だという理解なんだ。

























質問

山城 ( 以下、山 ) :今回はTwitterにて事前に、それから生(Ustream配信中) でもキャプテンへの質問を頂いています。まず一つ目。サッカーがまだ誰も知らない新しい競技だとしたら、その魅力をどのように表現して世間に伝えていきますか。

川:一番魅力のあるプレーを見せたいよね。それはやはりジーコやリトバルスキーのような、ドリブルで人を抜いていけることだよね。ラモスよりも数段上のレベルでの、相手を抜き去っていく技術の素晴らしさ。これを見ないとサッカーの面白味は日本人には分からないと思ったのが、彼らを呼ぶことに繋がっているんだ。早慶戦のような伝統っていうのも重要で、スーパースターがいて、技術的にレベルの高いっていう、三拍子揃っているのが一番いいけどね。

岡田:今のJリーグで、観客動員数の少ないクラブが生き残る活路は何でしょうか。

川:入場料収入と、地域で応援してくれるスポンサー、それからJリーグの配分金を合わせると、最低でも4億から5億はJ2のクラブでも入るんだよね。その収入の中でクラブをどう運営していくかを考えればいいのであって、初めにお金ありき、選手の年俸ありきではない。僕はJ2のプロ契約選手は5人以上、つまり5人で良いと言っているんだよ。ここだけで食っていこうなんてことを我々は求めていないわけだよね。ただ、J1のクラブは大活躍するJ2の選手を見ているでしょう。それはおろか、ヨーロッパにだって行ける。本当に素晴らしい選手ならば、それに相応しい地位と給料を得られるような仕組みになっている。なのにJ2で高い給料を払って赤字だと言うのは、経営者が悪いということだよ。その辺りが全体にまだよく理解できてないと感じる。囲碁や将棋をやっている人で、本当にそれで生活している人はごく一握り。でも、囲碁や将棋が好きな人は沢山いるよね。それからプロゴルファーでも、本当に賞金だけで食べている人は50人そこそこ。しかし何千人というプロの資格を持っている人がいるわけでしょう。世の中というのは、身分が全て保障されているわけではない。サラリーマンだって、それぞれが努力している。だから常に上昇意欲を持つ、目標、目的がない限りは、そんなに高い給料を払ってやってもらう必要はないと思うんだよ。

熊:地域密着を志すJリーグクラブは、もっと他のスポーツに手を出せないでしょうか。

川: J リーグが出来た時に、サッカーだけではなくて、ヨーロッパのクラブのようなあり方でもっと他のスポーツもやってくれ、と言っても、初めはなかなか理解してもらえなかった。けれど18年経って、例えば湘南ベルマーレで、ビーチバレーの選手がアジア大会で銅メダルを獲っている ( 白鳥勝浩選手 ) 。他にもトライアスロンや、女子のソフトボールも持っているんだよね。東京ヴェルディもFC東京もバレーボールの強いチームを持っている。浦和レッズはレッズランドという、ラグビーやテニス、野球などができる、ヨーロッパのどこに出しても恥ずかしくない施設を持ったんだよね。その中から世界のトップのクラブが出てくるようになるには、もうあと20~30年かかるかなと見ている。ただ、初めはそういったものがゼロだったから、設立から20年近くの J リーグとしてはなかなかだよね。

山:それでは最後に、私たちも学生で、これから社会に出て行く身なのですが、キャプテンが一緒に働きたいと思う人材はどういったものかをお聞きしたいです。

川:若いうちに完璧な人なんているわけがないんで、失敗を恐れずに言う、ということだね。言わないと分からない、黙っていると、矯正すらしてもらえないんだよ。失敗を恐れずに積極的に意見を言う人、あとはインタビューの初めに言ったけれども、結論を先に、説明を後から、だね。





















―――

キャプテンからは、問題解決能力、実行力、スポーツを支える者としての気概の全てを存分に感じることができ、圧倒された。その存在感を強固なものにしているのが、「説得力」「理論武装」という言葉で表されていた、キャプテンが相当な努力をもって積み上げてきた『論理』なのだと僕は思う。「独裁者」という表現は、他を寄せ付けないプレゼン能力があってこそだ。この人を批判するのには、相当なパワーが要る。

私たち若い世代が、この人を超えていかなければならない。純粋な情熱から世界と伍す政治力までを併せ持つ、強烈なパーソナリティを持ったこのキャプテンを。

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